手羽作文

備忘録と反省文を兼ねて書くブログ

デスバレー国立公園の悪魔【ハリウッド映画祭参加日誌④】

kaitensushitaro.hatenablog.com

さて、私の参加した「デスバレー国立公園日帰りツアー」という、「死の谷」という名前に喧嘩を売るかのようなお気軽ツアーは、ベイカーという街でギリシャ風の昼食をすませたのち、いよいよ、デスバレー国立公園の中に入ろうとしていた。夏には40度~50度を超え、アメリカの最高気温記録を保持しているまさに地の果てである。11月だったので、訪れるにはちょうどいいシーズンだったようだが、それでも日差しの強さをひしひしと感じた。

ここまでの行程は5時間をゆうに超えている。つまり日帰りツアーである以上は帰りも同じ時間かかるので、デスバレーに滞在できる時間は短い。しっかり目に焼き付けなければならない。まさにそんな状況で、私の身体には予想外の異変が起こっていた。

めちゃくちゃ眠くなってきたのである。

初めは日差しが強すぎて、目を開けづらいのかと思っていた。だが違った。単純にものすごく眠いだけだったのだ。「なぜこんなことに」鈍い頭で考える。朝、確かに4時くらいに目が覚めている。だが6時間は確実に寝ているのだ。幾ら何でも昼過ぎに眠くなる道理はないのである。

これが、時差ボケなのだろうか。渡米して2日目にデスバレーにきてしまった代償なのだろうか。正直なところ、今まで何度か海外に行ってきたが、時差ボケを実感したことはなかった。歳をとると段々感じるようになるというが、30歳を超えた途端に、待ってましたとばかりに押し寄せてくるのは急すぎじゃないだろうか。もうちょっと段階を踏みながら出現してくれないか、時差ボケよ。そう言いたくもなるくらい、強い睡魔である。

車で移動中にちょっと寝てみたが、なんともならない。

そうこうしているうちにも、デスバレー国立公園に突入してしまった。元気なガイドのZさんはここからが本番だとばかりに、張り切って案内をしてくれている。Zさんはまだ気づいていない。2人の参加者のうち1人が、半分寝ていることに!観光ポイントに着くと、10分くらいの見学タイムがあるので、そこで車を降りるのだが、かろうじて歩いている間は起きているものの、車に戻れば寝てしまう私であった。

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デスバレーの入り口にて。既に眠い。

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まさに死の谷、という感じの注意書き

前回の記事で書いた通り、私は朝、Zさんに「朝早いんで寝ててもいいですよ!」と言われ「全然大丈夫ですよ!ハハハ!」と返しているのである。

あれは何だったのか。

今、このツアーの佳境に差し掛かっているにも関わらず、私は爆睡しているのである。これほど案内しがいのない客も珍しいに違いない。

最低催行人数が2人でよかった

当たり前だがYさんは正常に起床している。Yさんだけでもガイドを堪能してほしい。そしてZさん、ごめんなさい。と、夢の中で私は思った。

とはいったものの、私がかろうじて目に焼き付けたデスバレーの名物スポットはやはり面白いものが多く、一見の価値があったと思う。

 

バッドウォーター

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水が少しだけ地面から湧き出て、水たまりみたいになっているのだが、めちゃくちゃ塩分が濃くて飲めたもんじゃないという、デスバレーで遭難した人に対する嫌がらせのようなスポット。最初に足を踏み入れた西部開拓団の人がこの水を飲んで「Oh! Bad Water!」と言ったに違いない。

 

悪魔のゴルフコース

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こちらはちょっとひねりのあるネーミング。こんな場所でゴルフをするやつは、確かに悪魔だ。悪魔というか、物好きだ。エイリアンの店でジャーキー買うくらい物好きである。ここでのゴルフに飽きた悪魔の1人が、睡魔となって私に取り付いていたのだろうか。

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全く目の開いていない私

■ザブリスキー・ポイント

やけにウネウネしている。何万年も前からそのままの地形らしい。だからって何でうねっているのかは不明。

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サンド・デューン

スターウォーズのロケ地として知られる、THE・砂漠。

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砂漠で立ったまま寝る男。地球で一番砂漠をナメている生物。

そしてデスバレー国立公園のビジターセンターでは、やたらと水が安かった。今までのアメリカの物価の高さから比べると半額くらいだろうか。必需品だからこそ、なるべく安く売ろうという良心を感じて感心した。ぺこぱも言っている通り、水と知識は独占してはいけないのである

そんなこんなでデスバレーの主要スポットを駆け足で見て回り、(ちゃんと見ようと思ったら数日かかかるらしいが)1時間ほどでツアーは帰路へついた。

もちろん私は帰路も爆睡である。

荒野に沈む夕日も見れたはずだが、そんなことはお構い無しに私は寝続けた。そして、起きた時には、夜のLAに到着していたのだった。

やや、気まずい。Zさんも、呆れているだろう。

とは言え明るいZさんは、そんなことはおくびにも出さず、朗らかに私をホテルまで送り届けてくれた。途中、日本の「スーパー銭湯」の話になったが、Zさんが「私はね、昔から湯船に浸かるのが嫌いだったんですよ」と言っていたのが印象的だった。私が初日から感じていた「風呂好きはLAには住めない」という珍説が現実味を帯びてきた。

そう言えば、初日にタクシーの運転手がオススメしていた「インアンドアウトバーガー」を夕食に食べようと思い立った私は、ホテルの近くの「インアンドアウトバーガー」前でZさんに降ろしてもらい、このツアーを終えた。ありがとう、Zさん。そしてデスバレー。

「インアンドアウトバーガー」の店内は、さすがタクシー運転手のおすすめとあって、かなり混雑していた。やはり人気店なのだ。チェーン店らしいが、日本には進出していない。これは良い機会だ。私は、人気のチーズバーガー的なセットを「to go」(テイクアウト)して、ホテルで食べてみた。確かに美味い。シンプルな味なのだが、肉の味がしっかりするというか、そんな感じだ。ポテトも山盛りである。

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日帰りでデスバレーに行って、寝ながら帰ってきて、そのままハンバーガーを食べられるなんて、いい時代に生まれたものだ。私という人間の堕落ぶりを見たら、西部開拓団のカウボーイは何と言うだろうか。彼らの冒険は無駄じゃなかったと思ってくれるだろうか。いや、鞭でひっぱたくだろう。

そんなこんなで、明日はいよいよ最終日、そして映画祭なのである。

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