手羽作文

備忘録と反省文を兼ねて書くブログ

ハリウッド大通りのジョーカー【ハリウッド映画祭参加日誌②】

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激烈な睡魔に襲われながらも、なんとか無事に「ハリウッドルーズベルトホテル」に到着した私だったが、そこでぐっすり眠るわけにはいかない。17時から人と会う約束があったからだ。それはトラベロコ というサイトで連絡を取ったXさんという人で、ロサンゼルスに住んで映画関係の仕事をしているという人だった。トラベロコ とは、世界中に住んでいる日本人にお金を払うことで、観光案内とか、通訳とか、いろいろお願いすることができるというサービスだ。一度、当日ドタキャンという目にあったことがあるが、今回はそんなことはなかった。1時間だけ仮眠をとって無理やり起き上がり、Xさんと合流する。ハリウッドサインの近くと、LALA LANDのロケ地でもおなじみのグリフィス天文台へ連れて行ってくれることになった。ただし、金曜日の夕方は、車社会のロサンゼルスでは渋滞がひどい。だが、車の渋滞も、それはそれでLALA LANDのオープニングを感じさせる。道中、色々とこちらの映画界の話を聞いた。印象的だったのは、アメリカの映画界は徹底的な金儲け主義なので、映画の資金を集めるために投資家にプレゼンしようと思ったら、「俳優は誰か」「なぜこの映画はヒットするのか」だけを徹底的に売り込まなくてはならない。だが日本では「この映画を作る志は?」と聞かれて驚いたそうだ。どちらがいいというものでもなさそうだが、単純にハリウッド映画の強さは、やはり徹底的な金儲け主義から来ているのだろう。

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例のアレ

グリフィス天文台の駐車場には長蛇の列ができていた。LALA LAND以降、かなり賑わっているらしい。グリフィス天文台は、天文台というよりはそこから一望できるロサンゼルスの夜景が人気だ。夕日が沈んだ直後の、なかなかいい景色を見ることができた。

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「LA LA LAND」以降、グリフィス天文台の人気は沸騰しているらしい

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ちょうど、マジックアワーと呼ばれる時間帯だった

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ものすごく逆光の私

夕食、Xさんに地元のハンバーガーレストランに連れて行ってもらう。ハンバーガーのボリュームもさることながら、ポテト(フレンチフライ)の量が半端ない。飲み物も基本的に酒かコーラなどのジュース、もしくは水しかない。お茶がないのだ。逆に、この食文化で太らずにいることの方が難しいだろう。食べきれない分は「to go」と言えば持ち帰りできるらしい。だが、持ち帰って深夜に食ったりすれば、それはそれでガッツリ太るだろう。アメリカでは、太るか、捨てるか、二者択一なのだ。

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暴力的だが、美味い

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手前が丸いポテトフライで奥はサツマイモのフライ

 3日間の現地滞在の1日目が終わろうとしている。私は2日目は「デスバレー国立公園」をめぐる日帰りツアーに申し込んでいた。XさんはLA20年住んでいるが一度も行ったことがないらしい。「結構遠くないですか?」と驚いていた。砂漠に行くなら帽子は絶対に買った方がいいと言う。確かにその通りだ。幸い、ハリウッドには土産物屋がたくさんある。私はホテルの前にあるハリウッド大通りの店でXさんに降ろしてもらい、別れた。「LA LA LAND」という名前の、いかにも観光客向けといった感じの、ハリウッド土産を網羅した店だった。そこで私は「Hollywood」と書かれた、激烈にダサい帽子を買うことにした。そういう帽子しかなかったのだが、被るのは明日だけだし、これも思い出だ。

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アメ横でも売ってそうなハリウッド帽子

だが、この店を出た直後に初日最大の事件が起こってしまう。私が、店の外観の写真を撮ろうとしたその時、なんと、

暗闇からジョーカーが現れたのである。

正確にはジョーカーのコスプレをした男だが、ついこの間映画「ジョーカー」を見た私はすっかり不意を突かれてフリーズしてしまった。ジョーカーはフレンドリーな様子で、「一緒に写真を撮ろうぜ!」と言ってきた。私は、ちょうどスマホをカメラモードにしていたこともあり、勢いに押されるまま、「お、OK」と言って、カメラを構えてしまった。だが、その時、脳裏によぎったのは4年前のスリランカ旅行、像との記念撮影でぼったくられた記憶である。

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「あ、これお金請求されるやつだ」だが気づいた時にはもう遅い。ジョーカーは上機嫌で「Where are you from?」と聞いてくる。馬鹿正直に「Japan」と答えてしまう私もマヌケだが、ジョーカーが怖すぎて、テンパってしまったのだ。

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完全にテンパっている私とジョーカー

撮影が終わると、ジョーカーが何か言っている。

「Need you!

… ? なぜジョーカーは私を必要としているのだろうか…?

戸惑いMAXである。理由は分からない。分からないが、ジョーカーに必要とされてもいいことなんてあるわけない。悪の手先にされるか、下手すりゃ殺されるだろう。お金を請求される方がまだマシだった…。私がフリーズしていると、次にジョーカーは

This is Hollywood! Need you!

と言った。ジョーカーの意図を探る新たな言葉登場である。……もしかして、「ハリウッドが君を必要としている」ってことだろうか。もしかしてこのジョーカー、ハリウッドの覆面スカウトマンか何かで、私が若手の映像制作者であることを知っていて、秘密裏に接触してきたのだろうか。ハリウッドにドラフト制があるとは聞いたことはないが、NBAみたいに実はあるのかもしれない。

この間数秒、私の頭はフル回転しているのだが、ジョーカーは私が反応しないのに業を煮やした様子で、ポケットからお札を取り出して、それを示しながら、「Need you! This is Hollywood!」と再び連呼し始めた。20ドル札である。そこで私はようやく理解した。

もしかしてこれ「Need you」じゃなくて「にじゅう」なのでは?

ジョーカーは一生懸命覚えた日本語で20(にーじゅー)と連呼していたのだった。「ここはハリウッドなんだから、ジョーカーと写真撮ったら20ドルくらい払うのは当たり前だろボケ!」と言っていたのだ。ジョーカーは全く私を必要としていなかった。やっぱり必要としていたのは金だった。さらにジョーカーは様々な紙幣を取り出し、「おつりならあるぜ!」みたいなことも言っている。20ドルは、高い。てっきり5ドルくらいだと思ってた。写真1枚である。払いたくない。だがその時私は背後に気配を感じた。囲まれた…。焦って振り返ると、なんとそこにはスパイダーマンとスーパーマンがいて、私が逃げられないよう固めていたのだった。OMGとはこのことだ。お前ら正義の味方じゃないのかよ…。仕方なく私はジョーカーに20ドル札を渡して立ち去った。

全く自分の平和ボケぶりには呆れるばかりだ。高い勉強代と思うしかないが、同様のミスは2度目なので、反省しきりである。しかし、映画「ジョーカー」を見た直後だけに、実際に出会ったジョーカーのやっていることが、やけに象徴的というか、映画の内容とシンクロしているように感じられて、私の印象に深く残る出来事になった。

 

続く↓

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