手羽作文

備忘録と反省文を兼ねて書くブログ

LAの朝日と「エリア51」のB級スポット【ハリウッド映画祭参加日誌③】

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さて、ジョーカーのカツアゲ事件から一夜明けた午前4時、私はルーズベルトホテルの304号室で起床した。昨日22時ホテルに着くなり泥のように就寝。だが、6時間後には起床していた。通常ならもっと寝ていてもおかしくない。やはり、まだ時差に慣れていないのだろう。

LAに着いて2日目、私は「デスバレー国立公園」という国立公園を巡る現地の日帰りオプショナルツアーに申し込んでいた。日本語のドライバーさんがつくので、言語の面は安心なのだが、最低催行人数が2人のところ、当初は私しか申し込みがなかったため、実施が危ぶまれていた。ギリギリでなんとか2人目の申し込みがあったらしい。

ネガティブ思考でインドア派にも関わらず、貧乏性なのが私の悪いところで、せっかくアメリカに行くのだから雄大な自然でも見なければ勿体無いという思考のもと、よせばいいのに2日目から国立公園に行くのだ。LAのほとんど何も見ていないうちから、LA脱出である。ネガティブと貧乏性が合わさって、結果アクティブになるという意味不明な状態だ。

何しろデスバレーは遠い。どこまでもまっすぐなアメリカの国道をぶっ飛ばしても、片道5時間、往復10時間以上の行程である。ツアーの95%が移動なのだ。だがデスバレー国立公園自体は面白そうではある。LAとラスベガスの間にある広大な荒野と奇妙な地形、そして、アメリカ国内の最高気温を記録したという強烈な日差し。その昔、アメリカ西部の開拓団が「死の谷」と名付けた、まさに地の果てなのだ。今回の旅の目標は、ついつい視野の狭くなりがちな渋谷近辺の日常から脱出して「世界の広さと自分の小ささを実感」し、リフレッシュにつなげていこう、というもの。そういう意味では、デスバレーはコンセプトに合っている。ビットバレーからデスバレーへ。そんなに谷が好きなのだろうか。

 とはいえ出発までは2時間ほどあった。持ってきた仕事を片付けよう。日本では夕方~夜の時間帯。色々とメールだなんだが届いている。

そして私は6時過ぎ、ホテルまで迎えにきてくれたZさんのバンに乗り込んで、デスバレーに向けて出発したのであった。ドライバーのZさんは現在60代。30代の時日本からLAに仕事で赴任し、現地で結婚したため永住を決めたという経歴の持ち主だった。昨日のタクシードライバーと同じ、30代からの移住組だ。Zさんは元気だった。めちゃくちゃ声がでかい。心なしか、日本の60代より活気があるように感じる。というか、私よりも元気じゃないだろうか。やはりLAの空気は、人間を元気にするのかもしれない。不思議と、それは現地にいると実感できた。落ち込んでてもしょうがない雰囲気がここにはある。

もう1人の参加者を迎えにいくため、ダウンタウンリトルトーキョーに向けてバンは走る。正直、ちょっと見てみたいと思っていた地域なのでラッキーだ。全然知らなかったが、LAダウンタウンといえば、高層ビルの立ち並ぶオフィス街だった。だがリトルトーキョーには今はもうあまり日本人はいないらしい。とはいえリトルトーキョーには、日本語の表記のお店がいくつかあった。何だか、百年前に日本からこの地にやってきた日本人たちのことを思うと感慨深い。今よりもはるかに移住のリスクのあった時代に、移住しなければならない事情とか、太平洋戦争中に白い目で見られたこととか、現地に行くと色々と考えるものだ。

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リトルトーキョーにある"酒道場"

もう1人の参加者の男性のYさんは、社会人だったがLAの近くの都市の大学だか企業に留学していて、2ヶ月だかそれぐらいの留学が終わりに近づいてきたので、LA観光に来たついでにこのツアーにも参加したとのことだった。普通はそうなのだ。LAついて2日目でデスバレーに行くヤツはおかしいよ。現地ついたらよくわかった。

そんなこんなでZさんとYさんと私の3人のデスバレーツアーが始まった。LAのハイウェイの向こうから朝日が昇ってくる。空が広いから朝日も綺麗だ。思わぬ絶景。写真を撮る私をよそに、Zさんはめちゃくちゃデカい声でYさんに自己紹介をしている。Zさんにとってはこれが日常なのだ。

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LAの朝日

Zさんは元気よく「朝早かったんで、遠慮せずに寝ちゃってください!!!!」と言った。私は、ホテルでがっつり寝ていたし、全く眠くなかったので「全然大丈夫です!!!ハハハ!!」と言った。何が面白いのか不明だが、Zさんの元気に負けないように笑っているのだ。

出発して3時間くらいが経過した。やがて街並みはなくなり、山が目立つようになってきた。さらに1時間後、車は完全な荒野の中を走っていた。まさに西部劇。

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荒野の中をひた走る

どこまでも続く荒涼とした風景。この中を馬で移動するとか、正気の沙汰じゃない気がした。昔見た「ノクターナル・アニマルズ」という映画を思い出した。調べたら、まさにロサンゼルスの荒野で撮影した映画だという。何とも形容しがたい不思議な映画だった。つまらない訳じゃないけどどこが面白いともよく分からない。それと同じように、目の前の荒野にも、不思議な魅力があるように感じた。

 

(と思ったら予告編にはあんまり映ってなかったが↓01:09あたりの感じ)

youtu.be

 

Zさんは昼休憩のために途中のベイカーという街に寄ると言った。荒野の中をどこまでも続く道の先に、街が見える。この時、「RPGゲームって実写にしたらこういう感じなんだ」と思った。ポケモンとか、ドラクエとか、街と街を道がつなぐマップが基本だが、東京にはそういう明確な街の分かれ目がないので、いまいちピンとこなかったのだ。 

イカーはロサンゼルスとラスベガスの間にある街だが、それだけではない。この地域には「エリア51」という米軍基地があり、そこで宇宙人の研究をしているという噂があるのだ。そのため、ベイカーは世界中からオカルト好きが集まる街でもある。そんなオカルト好き達を相手に商売するのが「エイリアン・フレッシュ・ジャーキー」という店である。

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一見して分かる、B級スポットだ。アメリカのA級スポットを見る前から、B級スポットを訪れてしまった。日本にもよくある、観光客だけを相手にしたコンセプトショップなのだが、特筆すべきは、この店の主力商品が「ジャーキー」であることだ。宇宙人Tシャツなども売ってはいるがごく1部で、店内にはビーフジャーキーが所狭しと並べられている。一体、エイリアンとジャーキーに何の関係があるのだろうか。Zさんもよく分からないと言っていた。ジャーキーの他には、ホットソースもかなりの品揃えである。だからなぜだ。Zさんが言うことには、今までツアーに参加した日本人客の中で、1人だけ、店のジャーキーやホットソースの品揃えに大喜びし、大量に買い込んだ人がいたという。どこの国にも変人はいるものだ。変人に国境はないとも言える。

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店内の大統領風エイリアンとジャーキー

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完全にヤバいやつ

昼食はタコスか、ギリシャ風タコスかを選べることになっていた。この街にはそれくらいしか飲食店がないのである。基本的には肉や野菜を小麦粉を練ったもので挟む文化なのだ。飽きないのだろうか。せっかくなのでギリシャ風タコスを食べることにした。「ギリシャ風」のイメージが全く湧かないが、これも経験だ。

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外観のギリシャ感がすごい

結果、ギリシャ風は美味かった。正確に形容することはできないが、バーベキュー的なソースだった。ただ、肉をラップしただけの料理とポテトで10ドル超えてしまうのは流石の物価である。もちろんポテトは大量なのでお腹はいっぱいなのだが。

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ギリシャ風タコス

この街を出ればいよいよデスバレーである。だが、この時私に、とある悪魔が忍び寄っていることなど、知る由もなかった。(やけに大げさな終わり方で次回へ続く)

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