手羽作文

備忘録と反省文を兼ねて書くブログ

短編映画「VR職場」を公開しました

2019年に制作し、しばらく映画祭回りをしていた短編映画「VR職場」の本編を、YouTubeにて公開しました。
この映画のおかげで国内外、合計14の映画祭に参加させていただきまして、時には悔しくて泣いたり、時には賞をもらって泣いたりと、なかなか情緒不安定な経験をすることができました。グランプリをいただいた佐世保でのことや、ハリウッドの路上でジョーカーにカツアゲされたこと、豪雨の中で富士山麓を彷徨ったことも今となってはいい思い出です。この作品(とそれに付随する私)を快く受け入れてくださった映画界の皆様にも感謝を申しあげたいと思います。
 
この「VR職場」という作品は、「労働」というテーマで作った30分のコメディドラマです。
脚本を書き始めた頃、ブラック労働や、パワハラ、やりがい搾取などの問題に関する議論が盛り上がっていて、特にネット上では「労働嫌悪」と言ってもいいくらいに働くことを否とする風潮があり、私も、他人事ではない思いでそれを見ていました。なぜなら、こんなに仕事が好きで、仕事ばかりしている人生の私でも、「もう働きたくない」と感じることが、今まで何度もあったからです。
思えば新入社員の頃は先輩たちの企画会議を聞くことができるだけで嬉しかったものでしたが、次第に会議が嫌いになり、撮影が嫌いになり、編集が嫌いになり、残業しながら「何のために生きているのか」と考え、転職し、ついにフリーランスになったのも、結局は働くことが嫌いになりそうな自分を何とかして宥めようとジタバタした結果なのかもしれません。
とにかく、「なぜ我々は働くことが嫌いなのか(あるいは、嫌いになったのか)?」ということに、自分なりに向き合おうと思って作ったのが、この作品でした。
映画祭を回ってみて新鮮だったのは、観てくださった人の反応が「すごく伝わった人」「面白がってくれる人」「伝わってない人」という感じで、反応が分かれたことです。それは単純に、私の実力不足を痛感するところでもあったのですが、同時に、「なぜ我々は働くことが嫌いなのか?」の「我々」は、自分が思ってるより多くないかもしれないという、そんな気づきもありました。
考えてみれば、この映画が満場一致で伝わる社会なんて地獄ですね
それでも、各映画祭で「すごく伝わった人」が話しかけてきてくれたり、時にはメールで熱い感想を寄せていただいたりしたのは、とても励みになりました。世界のどこかに自分と同じ感情を抱えている人間がいる、ということを知れるだけでも、お互いちょっとだけ救われるのかな、と思う今日この頃です。
そんなこんなで作った映画でしたが、映画祭回りを終えて、本編を公開いたします。皮肉にもコロナ禍によって、バーチャル系の技術進歩は加速する一方です。近いうちに、VR内に出勤する日が来るかもしれません。
よろしければ、お時間ある時にご覧くださいませ。