手羽作文

備忘録と反省文を兼ねて書くブログ

マッチングアプリで学んだこと

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前回に引き続きマッチングアプリの話である。そんなこんなで30代になった私はマッチングアプリを始めることにした。

元々ほとんどなかった私の恋愛筋力は、長いブランクによってほとんどゼロに近くなっていた。特に私は「相手に恋人がいるか」という確認をするのがものすごく苦手だった。苦手というのは、「下手」というのもそうだが、「それをすることによってものすごく疲れる」ということでもある。恋人の有無の確認をするだけでものすごくエネルギーを消費してしまうため、仕事が忙しい時はそんなことにエネルギーを使う余裕もないし、やりたくもないのである。しかもそれで「既に恋人がいる」という結果が出た場合は振り出しに戻ってしまう。私にとってものすごくエネルギー効率の悪い作業だった。その後の「デートするならどこに行くか」「何を着るか」「何を話すか」などを考えることも、私の脳と精神に多大なる負担をかけた。どうも世の中には、それらの作業をすることで楽しくなったり、リフレッシュになる人もいるらしい。あるいはそっちの方が多数派のように思える。ドリカムとか聴いてるとそんな感じだ。

しかし私は残念ながら、そうではなかった。

思えば「運動」と似ている。運動音痴な私にとって「運動」も似たようなものだった。ものすごくエネルギー効率が悪いし、出来も悪い。普通の人ができることが容易にできない。私は「運動」と「恋愛」が苦手なのである。生物としての根本的な二大活動がどちらも苦手なのだ。原始時代なら真っ先に淘汰されていただろう。ただし逆に明治時代であれば(あるいはごく数十年前でも)、私のような人間でも強制的にお見合いが実施され、早々に結婚していただろう。

ある意味「自由恋愛」というものが曲がりなりにも実現しているこの現代は、人間の歴史にとって未知の領域なのかもしれない。

マッチングアプリのありがたみ

そんな私にとって、マッチングアプリはありがたいツールだった。私がなかなか自力で超えることのできなかった「リサーチ」という壁をある程度まで低くしてくれるのである。
まず「相手に恋人がいるか」というのはアプリに登録した時点で判明している。
さらに、趣味や属性が細かく設定できる点が非常に良かった。例えば趣味の登録欄には「映画鑑賞」だけでなく「好きな作品」まで登録することができる。趣味といえども、いや趣味だからこそ「この映画を好きな奴とは絶対に気が合わない」というラインが存在する。逆に「この映画を好きな奴とは絶対に気が合う」というラインもある。「好きな作品」ごとのマッチングは非常に重要なのである。
私は「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」のファンだが、以前同じように「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」が好きだという女性と出会ったことがある。にわかにテンションが上がったものだが、話してみると、なんと好きな「回」が全く違ったのだ。その女性の着眼点は私にとって「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン聴いててそこが一番面白いっておかしいだろ」と感じるものだった。結果的にその会話はうまく噛み合わず、大して盛り上がらないまま終わってしまった。
まあ、アプリでもそこまで細かい分類はできないのだが、とにかく「映画鑑賞」だけでは広すぎて参考にならないどころか、最も気が合わない相手を引いてしまう危険性もあるのである。

他にもプロフィール欄には自由作文のほか、「年齢」「出身地」「年収」「結婚歴」「学歴」「結婚願望の度合い」などさまざまな情報が記載されている。いちいち対面してから言葉を選んで確認する必要がないのである。逆にこちらも情報を開示することで伝える手間が省ける。

さらにプロフィール欄にはさまざまな画像を登録することが可能で、顔出し画像もあれば、顔出しをしていない人もいる。画像は時に言葉よりも多くのものを伝えてくれるものだ。私は女性に「いいね」(マッチング申し込み)を送る際、「フェス」の画像を掲載している人には「いいね」を送らなかった。いや、送れなかったのだ。「フェス」で写真を撮ってそれを掲載するという陽キャ感が、陰キャの私に恐れを抱かせるのである。「ディズニー」の画像も同様だ。「フェス」や「ディズニー」に行って写真を撮ること自体が怖いと言っているのではなく、それをプロフィール画像に設定するという精神性に、私との隔たりを感じずにはいられないのである。
余談だが、とある女性のプロフィールには「車を持っていない男性はお断りです」と書かれていた。ここまで大上段に条件を提示する人も稀だが、もはや潔いとも言える。

こんな感じで細かく趣味を登録できる

 

マッチングアプリで学んだこと

基本的にマッチングアプリは女性の価値が高い場所である。
多くのアプリでは男性のみが有料で、女性は無料で使用することができる。女性は、アプリに登録すると瞬く間に「いいね」が送られてくるらしい。どうも手当たり次第に「いいね」を送っている男がいるのである。
一方男性は登録しても「いいね」が殺到することは基本的に無い。自分から女性に「いいね」を送ることが活動の基本になる。
男性はガツガツとアプローチを送り、女性はそれを見定め、より良い男性を選ぼうとするというシステムで成り立っている世界だ。テレビの動物番組で見る、動物の繁殖行動と構図は変わらない。

では、女性はどのような基準で男性を選んでいるのだろうか。それは「まともかどうか」である。もちろん顔や年収なども重要な要素だろうが、それよりもはるかに重要なのが「まともかどうか」という基準である。
女性には日々「まともでない男」からの「いいね」がどんどん届く。一見してまともでなさそうならすぐに判断できるが、「まともそうなのにまともでない男」も含まれているため、その選別の難しさは熾烈を極めるのである。どんなにイケメンで高収入であっても、まともでないなら避けなければならないと、女性側は考えている。
私は当初「趣味の合う人が見つかればいいなぁ」などと呑気に考えていたし、女性も同じような基準で自分を見ていると思っていた。しかし、それは大きな勘違いで、相手方が自分を見ている基準は「まともかどうか」だったのである。

活動初期、私は「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」でマッチングした女性に、いきなりメッセージで「いや、まいったね」(いつもラジオが始まる時に有田さんが言うお決まりの挨拶)と送ったところ、即ブロックされたことがある。

「まともではない人間」だと判定されたのだ。

私は「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」が好きな女性であればこの入り方に笑ってくれるのではないかと思っていた。そのうえ、上田晋也のように「高田文夫か!」と返してくれれば、もう結婚したいと考えていた。あまりにも愚かなり。
しかし女性側にしてみれば、仮に趣味が合うとしても、初対面で「いや、まいったね」などと送る非常識な男とは近づきたくないし、それ以外のまともな男性に時間を使うために早く切らなければならないのである。

・偉そうでないか

・クセが強くないか

・受け答えが噛み合ってるか

様々なチェックポイントがあり、はっきり言って内容はどうでもいいのである。もちろん面白いやり取りができるに越したことはないが、それはオプションの話だ。
であるからして男性側は、少なくともまずは「私はまともです」というアピールをする必要がある。メッセージでは自己紹介から入り、適度に質問に答えつつ相手にも質問を振る。ある程度回数を重ねたら、通話かデートに誘う。この過程に奇抜さは一切必要ない。そして多少は打ち解けてきたかなというタイミングで初めて、砕けた会話も許されるようになるのである。
この法則に気づいてからは、格段にアプリ活動がうまくいくようになった。

環境を知り、相手方の事情を知ることは、結果として自分の振る舞いを向上させるという、良い教訓になったのであった。

次が最後の記事です↓

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