手羽作文

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いよいよ『Japan Cuts Hollywood』で上映される【ハリウッド映画祭参加日誌⑤】

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さて、デスバレー国立公園日帰りツアーの半分を爆睡して過ごすという大失態の翌日、私は朝6時ごろに目覚めた。例によって時差ボケの影響で、早朝に目が覚めてしまう状態だ。そしてついに今日は映画祭「Japan Cuts Hollywood」に参加する日であり、アメリカ滞在の最終日でもあるのだ。明日の朝には日本に帰らなければならない。体内時計は大混乱だが、元々大して整っていなかったことを不幸中の幸いだと思うしかない。

溜まっている日本からの連絡に返信などしたが、まだ8時くらいである。映画祭の開始は10時なのでだいぶ時間がある。少なくとも、朝食は食べなくてはならない。私は外に出ることにした。ハリウッドは今日も抜けるような快晴である。ハリウッドで映画産業が発達したのは、とにかくずっと晴れているからだということも、この滞在中に知った。

滞在3日目にして、私はそろそろ、「何かをパンで挟んだもの」以外のものを食べたいと思っていたのだが、果たして朝のハリウッドの街には、そのような店は見当たらなかった。謎の寿司屋も見つけたのだが、まだ開店していない。(この店には、夜に訪れることになる)

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のちに訪れることになる寿司屋

とにかく区画の幅が広いので、付近をぐるっと見て回るのも一苦労だ。都内で言うところの一駅分くらいは歩いたが、カフェを除けば、選択肢はマクドナルドか、バーガーキングか、サブウェイの三択だった。

サブウェイしかない。

何しろ、私は昨夜もハンバーガーを食べている。その前夜もハンバーガーだ。昨日の朝食で食べたパウンドケーキを除けば、私はとにかくずっと「パンに肉を挟んだもの」を食べているのだ。せめて、今はパンに野菜を挟みたい。そう思ってハリウッド大通りのサブウェイに行くことにした。途中、ぼったくりでおなじみ、スーパーマンのコスプレ野郎とすれ違う。朝早くから出勤する、真面目なスーパーマンである。なにやら話しかけてきたが、完全無視だ。一昨日のジョーカー事件で少しは学習した私だった。

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のちに激写したスーパーマン

野菜食べたさにサブウェイに行くことを決意したのはいいものの、一抹の不安があった。パンの種類や焼き方だの、野菜はどれを入れるかだの、とにかくサブウェイは問答が多いのだ。全て英語で乗り切れるだろうか。だが、とにかくもう、ハンバーガーは食べたくない。尾崎豊のようにつぶやくと、私はサブウェイに入店した。

案の定、アメリカのサブウェイも質問攻め方式を導入していた。5分後、かろうじてパンの種類を選ぶところまではクリアしたが、最終的には野菜の細かい質問に耐えきれず、業を煮やした店員に「Everything OK?」と聞かれて「Yes」と答える私がいた。こうして全ての野菜が投入されたサンドイッチは、ほとんど日本と変わらぬ美味しさだったが、時折、正体不明の「すごい辛いピクルス的な何か」が挟まれていて、それに当たった時だけ悶絶したのであった。

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全部入りのサブウェイ

また、髭を剃る術を持っていなかったために、ドラッグストアに寄り、カミソリを購入。レジで愛想のいい店員さんに「How are you?」とか「Have a nice day」とか言われる。日本ではほとんどないが、アメリカではよく、レジで簡単な挨拶を交わすのである。3日目にして肌感覚として理解できたのは、やはりこういった文化は、多民族国家の必要から生まれたのでは、ということだ。日本人のような単一民族国家と違い、人種もバックボーンも違う人々が生活するためには、積極的にコミュニケーションをとることでトラブル回避になるし、逆に不審な人物を早期発見するきっかけにもなる。チップもきっと同じなんだろう。文化の違う人たちをまとめるには、早い話が「お金」の力が必要だったということだ。後払いで、かつ金額が定まっていないことで、誰もが真面目に働くモチベーションになる。徹底的に”性悪説”に則った文化だ。だがそれは、理にかなったやり方だと思う。そう考えると、スッと腑に落ちたし、チップを払うことを面倒だと思う気持ちは薄れていった。

さて、サブウェイを食べ終わり、少しぼーっとしたあと、いよいよ映画祭の始まる時間が近づいてきた。朝のハリウッド大通りは既に観光客で賑わい始めている。3日目にしてようやくハリウッドをちゃんと見る私だった。やはり圧倒的に中国人が多いように見える。チャイニーズシアターの前だからだろうか。

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チャイニーズシアター

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蝋人形館の前のマリリン・モンローと記念撮影する男性

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もうコスプレの域を超えている

さて、私がチャイニーズジアター前の有名な映画俳優の手形を見ていると、突然謎の老婆に日本語で話しかけられた。ジョーカー事件以降、何も信じられなくなっている私は、日本語がわからないフリをして無視を決め込んだのだが、すると老婆は、今度は中国語で話しかけてきた!「多分、日本人。でなけりゃ中国人」という事前の予想があったのだろう。もはや老婆は私を中国人と確信しており、マシンガンチャイニーズトークで何か言っている。だが私は全くそれを理解できない。どうしたらこの老婆から逃れられるのだろうか。今更「実は日本人なんですよ」と言っても、最初わからないフリをしたことがバレて恥ずかしい。困った末、私はカタコトの英語で「ノーサンキュー」と言った。英語がカタコト過ぎてアジア系アメリカ人というのも無理があるが仕方ない。老婆は、「じゃあ結局何人なんだよ!」と思ったか知らないが、私の困りっぷりを見て諦めてくれた。

さて、チャイニーズシアターである。その名の通り、外観は中華街のような建物なのだが、中には最新の上映設備があり、普通に映画館として営業しているようである。伝統的なハリウッドの映画館らしく、中には歴代ハリウッドスターの写真がずらりと飾られている。まさかここで上映されるとは。

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自撮りが下手すぎる

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シアター内の通路

現地に到着するまでは、実際のところ映画祭など行われておらず、騙されている可能性も(失礼ながら)覚悟していたのだが、果たして「Japan Cuts Hollywood」の受付は存在していた。そして、名前を告げると「Film Maker」というPASSをくれたのであった。控え室に通される。そこで会ったのは、日本の映画作品を海外に紹介する会社のQさんであった。アメリカに移住して10年以上というQさんは気さくに色々と話してくださり、助かった。

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受付にて

その日は映画祭も最終日であり、日本の短編作品を連続して上映するプログラムになっていた。私の作品の上映は昼過ぎなので、それまでは他の人の作品を見ることになる。アメリカで日本映画を見るのも変だが貴重な体験だ。やはり話には聞いていたが、アメリカの観客はよく笑う。決して満席ではなかったが、ちょっとしたことでも大きな声で笑うので、楽しい空間が出来上がっていた。たまに、「ここ、笑いどころなのかな?」というところでも笑っていたが、楽しんでいるならそれでいい。

というわけで、拙作「VR職場」も上映され、おかげさまでよく笑っていただいた。日本人にしか通用しないような箇所もあり、その辺は伝わってないような気もしたが、心配していたほど伝わらないこともなく、よく笑っていただいて、ありがたかった。上映後、観客の前に出て挨拶する。私は、「Thank you for watching my movie.」的な定型文を一生懸命喋り、その後すぐさま日本語で「私が英語で喋れるのはここまでです」と言った。通訳の人が訳してくれて、まあまあウケたので、よかったと考えよう。色々と質疑応答もいただいて、面白い体験になった。

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登壇

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映画祭スタッフの人たちの中には、現地で映画作りをしている学生などもいて、そういう人たちと話すのも刺激になるし、大変だったが渡米してよかったと思える体験であった。そして15時くらいに上映が終わり、残された時間でついに私のハリウッド観光が幕を開けたのである。

せっかくなので日本じゃ行けないところに行こう。そう決めた私が選んだ行き先は、知る人ぞ知るダークスポット「Museum of Death(死の博物館)」であった。

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